2016年8月21日日曜日

NISAはやるべき?やらないべき?

NISA制度の内容

NISA制度の内容はマネックス証券の以下のページが分かりやすいです。
https://info.monex.co.jp/nisa/about.html

NISAのメリットは投資で得られた利益に対して非課税であることと(多くの証券会社で)買付手数料が無料なこと、デメリットは確定申告で損益通算と損失の繰越控除ができないことです。
(NISAでは投資対象商品が現物株・投資信託・REIT・ETF・ETNに限定される点も人によってはデメリットとなりますが細かい話ですので本記事では無視します。)

損益通算は複数の証券口座においてある年(1月~12月)の損益を合算できる制度です。
たとえばある口座で利益が出てても他の口座で損失が出ている場合はそれを合算した利益にのみ課税されます。
損失の繰越控除はある年(1月~12月までの取引)で合計が損失となった場合に翌年からの3年間の利益と相殺できる制度です。

NISAの損得を決定する要素

主に以下の要素がNISAの損得を決定します。
既に大きな金額でいろいろ投資をやっている、という人はNISAが損か得かの話が複雑になりますので、要素を押さえて自分で考える必要があります。

  • 売却益が非課税であること(非NISA口座でかかる20.315%の税金が免除)
  • NISAの新規投資枠(ロールオーバー含む)の期限が2023年であること
  • 5年に1度利益確定されること(ロールオーバーする場合は購入価額が更新されること)
  • 他口座と損益通算ができないこと
  • 損失の繰越控除ができないこと
  • 多くの証券会社でNISA口座では購入手数料が無料であること(特に海外ETFは恩恵大)

NISAの方が得しやすい人・そうでない人

NISAの損得を決定する要素は複雑なので汎用的な結論が出ません。
ですのでこの記事では一般解を示すのではなく、以下のように具体的なケースをいくつか想定して損得を示します。
また、最近のニュースによると非課税期間を20年に長期化するNISA制度の変更が検討されているようですが、もし実現するとしても数年後になるとのことなのでこの記事では触れないこととします。

長期積立投資をする人

長期積立投資をする人は、基本的に利益確定を行いません。(NISA口座ではロールオーバーを続けます。)
したがって損益通算と損失の繰越控除について考える必要がありません。
また、(仮にですが)NISAの2023年期限が廃止された場合は無条件でNISAの方が得になります。
逆に言うと、2023年期限がある限りは損になるケースが存在します。
それは、NISA口座から非NISA口座移管時に購入価額が更新されるため将来の利益確定時にかかる税金が増える可能性があるからです。

NISA口座の資産は2024年からロールオーバーできなくなり、600万円の枠が0になる2028年まで毎年非NISA口座(特定口座または一般口座)に移管することとなります。
この時に購入価額が更新されます。
もし購入価額が下がっていたら(損失が出ている場合は)、将来の利益確定時にかかる税金が増えます。
この購入価額の減少が、今までの5年毎のロールオーバー時の利益合計を上回っている場合はNISA口座で運用していた方が損になるということです。
もっとシンプルに言うと、NISAを始めてから2028年までの損益合計がマイナスの場合はNISA口座の方が損です。

しかしそのようなケースはまれでしょう。
たとえば今からやるにしても利益確定が始まる2024年まで8年の猶予があるのであり、そこから2028年まで5年間の8~13年トータルリターンがマイナスでなければ損になりません。
ITバブル崩壊は約2年で、リーマン・ショックは約1年で底打ち・反転上昇していることを考えると、通常の金融危機であればNISAの方が損失になる可能性は小さいと言えます。
ただ心配があるとしたら、今の世界的な量的緩和が世界恐慌並のバブル崩壊を導き、10年以上の長期に渡って株価低迷を続ける可能性が(著名投資家を含み)ネット上で指摘されているということです。
その悲劇が起こった場合はNISAを使った方が損になってしまうことになります。

結論としては、長期積立投資を行う人は2023年~2028年までにトータルの損益がプラスになる可能性が高いと信じられる場合、NISAをやるべきです。

毎年利益確定を行っていて、確定申告をしている人

デイトレードやスイングトレード、1年や数年単位の中期トレードをやってる人は毎年利益確定を行って確定申告していると思います。
その場合はNISAでは損益通算できないことや損失の繰越控除ができないことがデメリットとして浮上してきます。

投資金額がNISAの枠内に収まる人

正確に言うと、NISA対象商品に対して年に120万円以下しか追加投資せず、その保有資産の購入価額合計が600万円以下で、なおかつ信用取引をしない人、です。
FXや先物、CFDにいくら投資していてもここでは関係ありません。
なぜならFXも先物もCFDも上記商品とは元々損益通算できないのでNISAのデメリットと無関係だからです。
しかし信用取引はNISAではできないのに(非NISA口座であれば)NISA対象商品と損益通算が可能なので、このパターンからは除外します。
(さらに正確には信用取引以外にもあると思いますがマイナーなのでここでは無視します。)

このパターンに当てはまる人は、NISA対象商品と損益通算可能な投資を全てNISA口座で完結できます。
したがって損益通算について考慮する必要はありません。

考える必要があるのは繰越控除です。
新規にNISAで投資可能な期限は2023年です。
したがって、2024年以降は課税対象となる非NISA口座(特定口座または一般口座)で投資を行う必要があります。
たとえば極端ですが以下の例を考えましょう。

NISA口座
2020年: -5万、2021年: -5万、2022年: -5万、2023年: -5万
非NISA口座
2024年: +50万

運悪く2020年~2023年まで合計20万円の損失ですが、NISA口座なのでこれは損失繰越控除の対象になりません。
2024年はNISAの投資枠外なので+50万円に対して20.315%の税金がかかり、39万8425円が実利益となります。
2020年からの損益合計は19万8425円となります。
しかしこれはNISAでやっていた方が損です。
なぜなら2021年から非NISA口座でやっていた場合は2024年の利益の繰越控除が可能だからです。
2024年は50 - 15 = 35万円が課税対象となり、27万8897円の実利益。
2020年からの損益合計は22万8897円となります。
結果的に3万円近くNISAを使わない方が得になりました。

しかしこれはもちろん、NISAの合計損益がマイナスになったから発生した損です。
今から2023年までNISAをやってトータルマイナス、というのは長期積立の場合と同じでかなり悲劇的な状況です。
よほど世界的に経済状況が悪くなったか、よほど下手くそだということです。
心配な人は、NISA終了の2023年が近づく2020年辺りでトータルがプラスの人は勝ち逃げして良いと思います。
負けるリスクを受容できる人は、勝つ確率が50%を超えると見込むなら心配をせずやり切っても良いでしょう。

投資金額がNISAの枠内に収まらない人

前のパターンと同様、FXや先物、CFDはNISA対象商品とは元々損益通算できないため、投資金額からは除外します。(いくら投資しててもNISAの損得と関係ありません)
したがって正確には、NISA対象商品に対してNISAの枠を超える金額の投資を行っているか、信用取引をしている人です。
この場合はNISAで損失が出ても非NISA枠の損失と損益通算ができないため、NISAでの勝率が悪い場合、NISAを使った方が損失が(税負担が)大きくなる可能性が常にあります。
端的に言うと下手くそな人は損をしやすく、上手い人は得をしやすくなります。
また基本的な戦略は自信のある投資をNISAで行い、それ以外は非NISA口座でやる、というものでしょう。
しかしこれに当てはまる人はNISAの損得を左右する要素があまりに多いため、「NISAの損得を決定する要素」を元に各自が戦略を立てる必要があります。

まとめ

長期積立投資をする人、投資対象と投資金額が少ない人はNISAのデメリットを受ける可能性が小さく、得をしやすいです。
毎年利益確定をしている人、信用取引をしている人、投資金額の大きな人はNISAのデメリットを意識しないと損をする可能性が出てきます。

2016年7月4日月曜日

英EU離脱で始める低コストな貴金属投資

貴金属投資の動機

英EU離脱の影響で米国利上げ期待が遠のき日欧の追加緩和期待も相まって先進国の国債利回りが軒並み低下、金・銀・プラチナが急騰しています。
短期的には米国利上げ期待復活などによる乱高下も考えられますが、ドル高はもはや限界で貴金属は中長期的には上昇が期待できるという理由で買いを考えている人は多いかと思います。

3つの貴金属の違いと共通点

それぞれの金属の違いは大雑把に言って、金はリスクオフで強く銀とプラチナはリスクオンに強いです。
銀は産業用途が半分、プラチナはさらに比率が高く8割弱が産業用途でうち5割が自動車触媒、プラチナを使うディーゼル車は欧州に多いです。
最近プラチナが3つの貴金属の中で弱かったのは英EU離脱による欧州の景気後退懸念があったためです。
その分、金とプラチナの価格差が歴史的な大きさに拡大しており、長期投資では売られ過ぎのプラチナに妙味がありますが、中期では金・銀の方が安定していると言えるでしょう。
3つの貴金属に共通しているのは、ドル安とインフレの恩恵を受ける点で、アメリカの量的緩和再開や紙幣の信頼低下によるインフレを期待する人にとっては貴金属投資に優位性があります。

この記事の目的

この記事ではコストの安い貴金属投資を紹介します。 しかし金については既に『2016年マイナス金利時代の金投資』で紹介しましたので、今回は銀とプラチナの購入方法を紹介します。

GMOクリック証券の商品CFD

まず、短期売買に向いているのは取引時間が長くレバレッジもかけられるGMOクリック証券の商品CFDです。
金スポットについては上記の記事に書いたとおり、「2016年2月26日時点で手数料は往復で0.025%、コストは年利0.524%」と低コストで長期保有にも向いています。
しかし残念ながら銀とプラチナのコストは以下の通り小さくなく、長期保有にはあまり向いていません。

銀スポット

直近の価格: 20ドル
取引単位: 10倍
買いの金利調整額: -1円/日 (365円/年)
直近のドル円レート: 102.5円
年利: -(365/(200*102.5))*100 = -1.780%
往復手数料: 20ドルで0.015ドルのスプレッド = 0.75%

白金スポット

直近の価格: 1050ドル
取引単位: 1倍
買いの金利調整額: -5円/日 (1825円/年)
直近のドル円レート: 102.5円
年利: -(1825/(1050*102.5))*100 = -1.696%
往復手数料: 1000ドルで1.5ドルのスプレッド = 0.15%

もちろん取引時間とレバレッジは大きな利点ですので短期であれば十分に活用できます。
また、年利には為替ヘッジコストが含まれます。
以下に紹介するETFと現物ではドルに対する値動きで取引するには同額ドル円ショートのポジションを持つ必要があります。
ドル円ショートは今だと年利-0.6%程度取られます。
マネースクウェア・ジャパンが行っているスワップキャンペーンで年利-0.1%です。
とは言えそれでも長期でポジションを取る場合はETFや現物の方が安いようです。

国内貴金属ETF

国内最安は以下の2つですが、売買代金が小さく流動性が低いのが気になります。

  • ETFS 銀上場投信 (1673): 信託報酬0.49%
  • ETFS 白金上場投信 (1674): 信託報酬0.49%

私は売買代金の大きな以下2つのETFを選びます。

  • 純銀上場信託(現物国内保管型) (1542): 信託報酬0.59%
  • 純プラチナ上場信託(現物国内保管型) (1541): 信託報酬0.59%

ただしこれらは円価格での取引になりますのでドル価格で取引するには同額ドル円ショートが必要です。
これに年利-0.6%ほどかかるため、実際には年利-1.19%ほどのコストがかかる計算になります。
手数料については証券会社に依存しますが、松井証券であれば1日10万円以下の購入であれば手数料0円です。
私は松井証券で時間分散して純銀上場信託を積み立てています。
そしてマネースクウェア・ジャパンのスワップキャンペーンを利用して年利-0.1%でドル円ショートによる為替ヘッジをしています。

貴金属現物(地金)

手数料は割高な一方、保有コストが年利0なのが現物です。
銀は最低30kgが売買単位となり保管が困難なためここでは検討しませんが、プラチナは金と同様小さく保管が容易です。
日本マテリアルだと100g単位でも追加の手数料はかからず、スプレッドは買い3875 - 売り3746の3.44%です。
また、売買価格にはともに消費税がかかるため、消費税が上がると売却価格が上がり、増税利率分利益となります。
したがって数年~数十年の長期保有に適しています。

私も今年の冬に金地金とプラチナ地金を100gずつ購入しています。
ただし、ドル価格で保有したい場合は同額ドル円ショートが必要になることはETFと変わりません。
年利-0.6%のコストがかかります。)

ちなみに私は地金を数年以上長期保有するつもりなので、アメリカが量的緩和を再開し十分に円高になったと判断すればドル円ショートによる為替ヘッジは外す予定です。
その場合はもちろん保有コストは年利0に変化します。

2016年4月17日日曜日

ナンピンを使わない理由と使う理由

Image courtesy of Serge Bertasius Photography at FreeDigitalPhotos.net

ナンピンとは

ナンピン(難平)は自分のポジションが損失となる方向に相場が動いた時にポジションを増すことを言います。
ナンピンはよく危険だと言われます。私も無計画に使うことはしないようにしています。しかし私は逆に危険を小さくするために使うこともあります。
この記事ではナンピンを私が使わない理由・使う理由をまとめます。
(あくまで理由であり、ナンピンを使った方が・使わない方が儲かる、という主張ではありません。)

ナンピンを使わない理由

現在のポジションから最終的にどれだけ逆方向に動くのか読めない時はナンピンを使いません。
ナンピンでポジションを増すと、それだけリスクは高まります。
最終的にどこまで逆方向に動くのか分からないままリスクを高めると、損切りラインも定まらず最終損失が際限無く大きくなる可能性があるため危険です。
というのはいろいろなサイトで書かれていると思いますので、使わない理由は以上に留めます。

ナンピンを使う理由

私は、逆説的ですがリスクを小さくしたい時にナンピンを使います。
それは、最初から一括で想定した全てのポジションを持たないことで、損切りになった時の最終損失額を小さくするためです。
使う場面は、使わない場面と逆で、逆方向への動きは限定的で最終的には自分の読む方向に相場が行き着くと判断した時です。
しかしもう1つ条件があります。
一時的にはどれだけ逆方向に動くのか分からないことです。
なぜなら一時的に動く幅も分かっているなら、そのタイミングで一括でポジションを取れば良く、ナンピンは不要だからです。
ナンピンをする時は、一時的にはどれだけ逆方向に動くのかわからないため、最初は小さなポジション、例えば想定した額の半分のポジションを取ります。
ポジションを0にしない理由は、全く逆行しないまま読んだ方向に大きく動く可能性があるからです。(ポジションを取らなかったらそれがそのまま機会損失になります。)
想定したラインまで相場が逆行した場合は、そこで想定の全額までポジションを追加します。
こうすれば、読みが外れて損切りの決断をする時、一括でポジションを取った場合よりも損失額を小さくできます。
これがリスクを小さくしたい時、という意味です。

以下、実際に私が今計画しているナンピンを具体例として示します。

ナンピン例1: ドル円ショート

私は2月下旬のG20以降、ドル円は今後数年間というスパンでは"最終的に"110円より下のラインで落ち着くという相場観を持っています。
その理由は以下の2点。

  • ドル高がアメリカの製造業と中国を始めとする新興国を苦しめ、市場の混乱とディスインフレが利上げの妨げになること、そしてそれをアメリカ当局が実際に示していること
  • 現在の有力なアメリカ次期大統領候補がドル高円安に批判的で、どう転んでもこれ以上のドル高円安が容認される状況ではなくなっていること
しかし"一時的に"どこまで円安になるのかは読めていません。
最近積み上がったヘッジファンドのドル円ショートポジションの巻き戻しや、年金と同じポートフォリオに変更を進めている共済など"鯨"によるドル買い、そして日銀の追加緩和、政府による財政出動によって一時的な株高・円安の可能性が想定されます。
したがって、最終的に持ちたいドル円ショートポジションを全額投じるのではなく、今はまだ3分の1ほどに抑えています。
残りは113~114.5円、117~118円まで戻ったところでドル円ショートのポジションを増していくプランです。

次に、損切りするケースを想定します。
私が損切りするのは上記の相場観が崩れる場合です。
2パターン想定しています。

  • 新興国の回復とアメリカ経済が想定以上に強く、アメリカが再びドル高(と日本の円安政策)を許容するようになる場合
  • 何らかの需給変化によって資源・エネルギー価格の上昇が極端に強まり、インフレ率の高まりからアメリカが利上げを加速させざるを得なくなる場合
これが現実のものになると自分が判断した場合、私はドル円ショートのポジションを損切りします。
この時の損切り額は、たとえば分かりやすく100万円分のドル円ショートを想定額とするとそれぞれ以下のようになります。
  • 112.5円で一括でショートしていた場合: 120円で損切りすると7.5万円の損失
  • 112.5、114.5、118円で等しくショートしていた場合: 120円で損切りすると5万円の損失
後者は損失額を3分の2にできています。
つまりナンピンによってドル円ショートのリスクを小さくしていることになります。
もちろんだからと言ってナンピンをするのが「正解」というわけではなく、もっと円高に対して強気で、大きく円安に戻すことなくどんどん円高になる可能性の方が高い、と読む人は一括で大きくポジションを持った方が期待値を高くできるでしょう。
実際、本記事を書いている時点でもルー国務長官の発言によりドル安円高方向に加速する可能性が高まっています。
その場合はナンピンは機会損失であり、一括でドル円ショートを投入していた方が儲かる、ということになります。

話は逸れますが、自分は損切り額をさらに小さくするために資源と貴金属のポジションをドルに対してロングしています。
なぜなら今後数年間は資源と貴金属の価格が対ドルで回復すると考えているとともに、損切りパターン2のケースになった場合、資源・貴金属ロングによる利益が損切り額を打ち消してくれるためです。

ナンピン例2: 原油ショート

私は、原油は今後数年間、最終的に40~50ドル以下の価格に落ち着くという相場観を持っています。
なぜならアメリカのシェールオイル企業の生存力が高い上、機動的にリグの停止・稼働を切り替えられるようになったことで供給の価格弾力性が飛躍的に高まったためです。
しかし一時的には何らかの突発的な供給の逼迫や投機的な値動きで60ドルを超えてくる可能性も想定しています。
損切りするのは、供給の価格弾力性が想定よりも小さい、もしくは想定外にシェールオイル企業が弱く破綻が連鎖するなどして原油価格が高止まりすると判断した場合です。
考え方はナンピン例1と同じですね。
少し脱線ですが、在庫過剰が続いていることから原油保管費用が高まり、コンタンゴになっている(先物やCFDを売っていれば限月をまたぐ毎に利益が得られる状態)のもショートが有利だと考える理由です。

ナンピン例3: 株価指数連動投資信託の買い

私は世界の株価指数の平均が、今後数十年間上昇を続けるという相場観を持っています。
なぜなら世界経済は一時的に減速はしても長期ではプラス成長をずっと続けているからです。
また、テクノロジーの進歩は止まらない、むしろ人工知能によって加速すると考えており、生産性の向上は今後も続くと考えます。
しかし一時的には金融危機や需要低迷・景気後退によって最悪リーマン・ショック時の安値を更新する可能性も想定しています。
損切りするケースは、気候変動・環境破壊が想定より深刻だったり、数万年周期の大災害が起こったりするなどして世界人口や生産性が長期で減少に転じたり、資本主義が崩壊したり、何か根本から株式投資の優位性が消失してしまった時です。
以上の理由で、今までのナンピン例と同じく今はまだ想定の全額を株価指数には投資せず、直近ではリーマン・ショック時の安値を基準に段階的にナンピンし、株式投資比率を高めていく予定です。

まとめ

本記事ではナンピンを使わない理由と使う理由を書きました。
使う理由について詳しく書いたため、もしかしたらナンピンこそが優れた手法だという印象を与えたかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。
モメンタムが十分に強いと判断したら一括で投じるべきですし、最終的な逆行幅が読めない時はナンピンを禁じてピラミッディングのみに集中するべきでしょう。
要するに、自分の相場観では何が読めて何が読めないのかを認識した上でこれらの戦略を使い分けることが大事だというのが私の考えです。
ナンピンは危険だからダメだ・ピラミッディングが常に優れている、などの安易な判断は戦略の幅を狭め、機会損失になると私は考えます。

2016年2月28日日曜日

2016年マイナス金利時代の金投資

年明けから急騰した金価格(対ドル)

私は2015年末にアメリカの利上げが始まったタイミングで金投資を開始しました。
しばらく塩漬けにする覚悟での投資開始でしたが、2016年は予想外のスピードでリスクオフが進み、金がドルに対して急騰しました。
2016年2月28日現在は先週末のアメリカのGDPや個人消費の底堅さが確認されたことから、いったん落ち着いたように見えます。(短期的に下落に戻る可能性があります。)
そこで2016年のこれから金投資を続ける理由について改めてまとめます。

対ドルで中長期的に金価格上昇を見込む理由

私が対ドルで中長期的に金価格上昇を見込む理由は4つあります。

ドル安による金価格上昇

現在アメリカ政府が懸念するほどにドル高が進んでおり、利上げを続けられたとしても大幅なドル高は進まず、むしろ利上げ休止か利下げに追い込まれた時のドル安の方が値幅が大きいと考えます。
また、最も安全とされる通貨は基軸通貨のドル、通貨の信用が下がる時に代替となるものが金であることから、ドルと金価格の逆相関の関係が古くから続いています。
したがってドル安になると金のドル価格は上昇することになります。

株価暴落による金価格暴騰の可能性

世界的な量的緩和にも関わらず世界経済の成長見通しが鈍化しているため、株式市場は暴落のリスクが無視できないほどに高まっています。
株価が暴落する時には避難先として国債と金が買われます。
それに加えて量的緩和バブルが限界に達して財政破綻のリスクが表面化した場合は国債も暴落するため、唯一の避難先として金は暴騰することになります。

産金コスト割れに近い金価格

主要な企業の産金コストは2015年時点で900ドル台前半程度であり、それ以下の価格帯は需要と供給の関係から長続きしそうにないと考えられます。

(http://www.mining.com/web/gold-miners-1200-cost-fallacy/より引用)
アメリカ経済が好調な今ドルに対して金の魅力は無く900ドル台まで下がるという予想も見られますが、長期的にはそんなに安くなったら買い場だと考えられるということです。
ただし企業努力によってコスト削減が進められているため今後900ドル以下に低下する可能性も否定できません。
産金コストを参考に投資する場合は"gold mining aisc"などのワードで検索して動向を掴んだ方が良さそうです。

マイナス金利政策に伴う相対的な金の魅力上昇

まず、長期リターンは株式>債券>金>ドルの順であることは長期投資家として認識しておくべきことです。
(正確に言うと金は実質リターンは無いがインフレ時に名目リターンがプラス、ドルは名目リターンも無いためインフレ時はマイナスリターン。)
(http://www.aaii.com/journal/article/real-returns-favor-holding-stocks.touchより引用)
しかし欧州と日本の量的緩和政策・マイナス金利政策によって国債利回りが下がり続け(=国債価格が上昇し続け)ています。
2016年2月26日時点で日本国債は10年ものもマイナス利回りに突入し、30年ものまで0.84%と超低金利です。
これからマイナス金利の利率が大きくなる場合は債券価格も上昇しますが、マイナス金利の拡大に長期の持続性が無いのならばそれはバブルです。
その避難先として金利が0である金の魅力が相対的に上昇した、と考えます。

私が金投資を行っている対象とその理由

GMOクリック証券の金スポット

対ドルで金を購入するため、GMOクリック証券の店頭CFDにて金スポットの売買を行っています。
2016年2月26日時点で手数料は往復で0.025%、コストは年利0.524%です。
為替ヘッジ無しの金ETFの信託報酬が年利0.39%~0.49%程度であることを考えると非常に割安であり長期投資にも向いている商品と言えます。
手数料が低いため短期的な値動きを狙って売買するのにも向いており、私は1200ドルを勢い良く超えたあたりでいったん利益確定し、今は再エントリーのタイミングを考えているところです。

金鉱株ETF (GDX, GDXJ)

金鉱株の価格上昇は採掘企業の収益に比例します。
採掘企業の収益はおおよそ(金価格 - 採掘コスト)ですから、採掘コストに近い価格になっている現在は金価格の上昇率以上に上がることになります。
今の価格帯だと2倍~3倍程度上昇しています。
NISAで買えるレバレッジ商品は大抵高コスト(長期で減価する商品)ですが、この金鉱株は信託報酬が0.5%程度と低コストであり、金価格の2~3倍動くということで個人的には最も魅力的なレバレッジ商品だと考えています。
金鉱株ETFも今年から購入したのですが2016年2月26日時点で30%超の含み益ができています。(もちろん下落もレバレッジがかかるためすぐに含み損に転換する可能性もあります。)
SBI証券で購入しているのでNISA口座であれば手数料無料ですが、売却手数料が3000円以上と高いためこちらは本当の暴騰が来るのを期待してひたすらホールド中です。

金地金

金地金のメリットは現物が手元にあるという強みと消費税増税の恩恵を受けられることです。
個人での取引の場合、消費税は購入時に支払い、売却時に受け取るため、売却時に消費税が上昇しているとその分だけ得をする仕組みになっています。
また、最近は金先物のロングポジションが金現物を大きく超えており、仮に皆が先物を現受けしようとした場合は現物が一瞬で枯渇する状態です。
そのような事態はテールリスクであり基本的には起こり得ないですが、資産防衛としては1つの良い選択だと思います。
デメリットはスプレッドが大きく主要な取扱業者の購入手数料が2016年2月26日時点で1.758%ほどであることと、自宅保管なら保管料は無料ですが高額になると盗難リスクが無視できなくなることです。
私は今年、日本マテリアルのインゴット100を購入しました。
100g単位の売買は500g以上の金地金に加えて手数料が余分に取られるのですが、インゴット100はその余分な手数料が無料なのがメリットです。

金ETF

中長期的にはドル高円安と言える今は対ドルで金を購入した方が良いと考えているため、金ETFは一切購入せず上記のGMOクリック証券の金スポットのみ購入しています。
特に最近の先進国首脳陣は最近の円安ドル高と通貨安競争リスクに対して懸念を表明しており、1ドル130円を超えるような円安は日本の財政危機が材料視でもされない限り起こりそうもない状況です。
そのため金ETFは、長期的に見てもある程度の円高が進んでから、購入を検討します。
購入するとしたら、現物との交換が可能な純金上場信託(現物国内保管型) (信託報酬0.49%) (1540) か信託報酬が0.39%と最安なETFS 金上場投信 (1672)を考えています。