2015年11月24日火曜日

GMOクリック証券CFDのコスト - S&P500

GMOクリック証券CFD「米国S500 (S&P500)」の実コスト履歴

ここ数年におけるS&P500の配当額と価格調整額の差からGMOクリック証券CFDの実コストを算出しました。
配当額はS&P500 divdend points indexから算出しています。

価格調整日 価格調整額 (円) 配当額 (ドル) ドル円 期近価額 取引単位 コスト (%) 年間コスト (%)
2015/09/17 1181 10.85 120.59 1960.00 1 0.0539 0.5039
2015/06/18 999 10.74 123.44 2,093.10 1 0.1265 0.5455
2015/03/19 934 10.56 121.32 2,050.40 1 0.1396 0.5399
2014/12/18 782 10.27 118.57 1,997.20 1 0.1840 0.5389
2014/09/18 858 9.89 107.33 1,984.70 1 0.0955 0.5284
2014/06/19 754 9.73 102.01 1,935.80 1 0.1208 0.5579
2014/03/20 708 9.54 101.27 1,839.90 1 0.1385 0.5962
2013/12/13 629 9.18 103.12 1775.05 1 0.1735 0.6298
2013/09/13 665 8.81 99.28 1688.80 1 0.1250 0.6744
2013/06/14 575 8.68 94.33 1624.50 1 0.1591 0.6197
2013/03/08 498 7.86 95.92 1549.75 1 0.1722 0.4842
2012/12/14 482 8.88 83.2 1415.25 1 0.2181 0.4267
2012/09/14 555 8.12 78.29 1466.25 1 0.0703 0.3222
2012/06/08 548 7.21 79.47 1329.45 1 0.0236
2012/03/09 478 7.37 82.47 1372.50 1 0.1147
2011/12/09 426 6.92 77.59 1259.25 1 0.1135
平均 692.0 9.0 99.3 1708.87 1 0.13 0.5360

ここ数年の年間平均コストは年利0.536%でした。
S&P500はくりっく株365での取り扱いは無い(指数の権利の問題から取り扱い予定も無い)ため、為替ヘッジつきの商品としては現在最安だと思われます。
2016/02/21追記: NYダウはくりっく株365で取扱が開始するようです。http://www.click365.jp/cfd/news/2016/info20160216_01.shtml

2015年11月16日月曜日

GMOクリック証券CFDのコスト - 日経平均とDAX

GMOクリック証券CFD「日本225 (日経平均)」の実コスト履歴

ここ数年における日経平均の配当額と価格調整額の差からGMOクリック証券CFDの実コストを算出しました。

配当額はくりっく株365の過去データを使用しています。
取引単位はGMOクリック証券が日経平均の価額の10倍、くりっく株365が100倍です。(そのため配当額はくりっく株365の数値を1/10にしています。)
コストは (配当額 - 価格調整額) / (期近価額 * 10) で計算した値と100倍にして%表示しています。
価格調整は年4回行われるため、年利計算では過去4回分のコストを合計した値としています。

発生日 価格調整額 配当額 期近価額 取引単位 コスト (%) 年間コスト (%)
2015/09/09 1070 1287.2 18216 10 0.1192 0.5811
2015/06/10 -10 184.9 20160 10 0.0967 0.6555
2015/03/11 760 1226.9 18781 10 0.2486 0.5898
2014/12/10 20 220.2 17167 10 0.1166 0.5861
2014/09/10 730 1038.4 15927 10 0.1936 0.5219
2014/06/11 90 136.2 14944 10 0.0309 0.5042
2014/03/02 780 1142.8 14811 10 0.2450 0.6035
2013/12/11 80 160.4 15330 10 0.0524 0.6881
2013/09/11 640 893.9 14435 10 0.1759 0.7076
2013/06/12 -50 119.3 13004.5 10 0.1302 0.6959
2013/03/06 590 987 12045.5 10 0.3296 0.5282
2012/12/12 80 149.5 9661 10 0.0719 0.5373
2012/09/12 680 826.3 8908 10 0.1642 0.5433
2012/06/06 130 97.5 8655.5 10 -0.0375
2012/03/07 640 965.7 9618 10 0.3386
2011/12/07 60 127.8 8696 10 0.0780
平均 393.1 597.8 13772.5 10 0.1471 0.5956

ここ数年間の平均コストは年利0.5956%でした。
純粋な短期金利よりは上乗せがあるようです。
価格調整額の元となる期近と期先の価格差は先物取引の裁定取引に依存しているはずなので、裁定取引にかかるコストがその程度だということでしょう。
それでも証拠金が購入金額の10分の1で済ませられると考えると随分安い利率と言えます。(価格が下落した場合は下落分=含み損だけ必要証拠金が増えます。)

GMOクリック証券CFD「ドイツ30 (DAX)」の実コスト履歴

DAXは配当込みの指数のため、価格調整額がそのままコストです。

発生日 価格調整額 ユーロ円 期近価額 取引単位 コスト 年間コスト
2015/09/17 -26 136.98 10194.10 0.1 -0.0186 0.4457
2015/06/18 104 139.86 11133.20 0.1 0.0668 0.4948
2015/03/19 374 128.63 11894.70 0.1 0.2444 0.5029
2014/12/18 220 145.98 9847.20 0.1 0.1530 0.4636
2014/09/18 42 140.46 9791.00 0.1 0.0305 0.4750
2014/06/19 104 138.7 10008.70 0.1 0.0749 0.5002
2014/03/20 269 141.19 9290.50 0.1 0.2051 0.4756
2013/12/19 219 142.4 9349.55 0.1 0.1645 0.4079
2013/09/19 65 134.34 8681.50 0.1 0.0557 0.3575
2013/06/20 51 128.32 7896.80 0.1 0.0503 0.3497
2013/03/14 138 124.85 8048.50 0.1 0.1373 0.3646
2012/12/20 98 111.74 7685.50 0.1 0.1141 0.4322
2012/09/20 36 101.48 7397.60 0.1 0.0480 0.3991
2012/06/14 40 99.87 6140.75 0.1 0.0652
2012/03/15 160 109.18 7152.30 0.1 0.2049
2011/12/15 47 101.31 5722.75 0.1 0.0811
平均 121.3 126.6 8764.67 0.1 0.1048 0.4361

平均は年利0.4361%と、日経平均よりも若干小さな値となっています。
また、CFDは差金決済取引であり証拠金も円で良いため全額為替ヘッジされる商品であり、現物の為替ヘッジコストを考えると非常に低コストな商品と言えるでしょう。
必要証拠金も日経平均と同じく購入金額の10分の1です。

注意点

日経平均とDAXのコスト自体はくりっく株365が最安だと考えられます。(コストは無担保コール翌日物と書かれており、年利0.075%程度です。)
しかし取引単位がGMOクリック証券の10倍になること、取扱商品数が(アメリカ株式指数やコモディティが無いなど)非常に少ないという欠点があります。
GMOクリック証券CFDとくりっく株365の比較についてはまた別の記事で取り上げる予定です。

2015年11月8日日曜日

CFDを利用すると低コストで為替ヘッジ付きの海外株・コモディティを買える

CFDを利用すれば手数料と短期金利のみのコストで海外株を為替ヘッジ付きで取引できるため、投資信託・ETFと為替ヘッジの組合せよりも安くなるケースがあります。
CFDの場合はドルの商品ならドルで差益を直接得ることができます。(得たドルは基本的にその場で日本円に転換されます。)
したがって、その資産の通貨の短期金利が、その資産の投資信託・ETFの信託報酬+為替ヘッジコストよりも小さければCFDの方が得だということになります。

2015年現在のドルの短期金利の目安は年利0.3~035%程度です。
参考: LIBOR米ドル3ヶ月ものチャート http://www.bloomberg.co.jp/apps/cbuilder?T=jp09_&ticker1=US0003M%3AIND
またGMOクリック証券のS&P500の手数料は0.02%程度と無視できるレベルです。
これより安い為替ヘッジ付き投資信託・ETFはなかなか見当たりません。(為替ヘッジ無しであればこれを下回る外国株ファンドも出てきていますが、その場合は自分で別の資金を用意してFXで為替ヘッジを行う必要があり、資金効率が下がります。)

なぜCFDのコストが短期金利(3ヶ月もの)なのかについては以前の記事「株価指数先物・CFDの理論価格は?」を参照してください。
GMOクリック証券のCFDであれば、ダウ、S&P500、NASDAQ、上海A50、インドNIF、香港ハンセン、コモディティ(原油や金スポット)をドルで、DAXをユーロで、イギリスFTSE100をポンドで取引できます。

投資信託での為替ヘッジ

投資信託は実物資産ですので、その資産の購入価値分全てヘッジしなければなりません。
ドル資産であればその資産価値分、円に対してドルを売っておく必要があります。

具体例として、10,000ドルの商品(投資信託かETF)を1ドル120円の時に1単元(10,000ドル分)買った場合を考えてみます。
為替ヘッジをするにはこの時10,000ドル分ショートする必要があるので、1万通貨のドル円ショートポジションを持ちます。
その後、10,000ドルの商品が15,000ドルに上昇、一方でドル円は100円に下落したとします。
すると資産は15,000×100-10,000×120=300,000円の利益。
ドル円ショートポジションは、10,000×(120-100)=200,000円の利益。
為替ヘッジ無しだと円高になった分だけ利益が減って300,000円となります。
しかし為替ヘッジ(ドル円ショートの利益分)があることで合計500,000円の利益が出ています。
これは、15,000-10,000=5,000ドルの利益を利益確定時点の為替レートである100円で円転換して500,000円の利益とすることと同じです。

コストはその投資信託・ETFの信託報酬、FXの手数料、ドル円ショートのスワップ(2国間の金利差でプラスにもマイナスにもなり得ます)です。 為替ヘッジ付きの投資信託・ETFの場合は、為替ヘッジコスト込の信託報酬(通常為替ヘッジ無しの場合より高額)です。

CFDで為替ヘッジされる仕組み

CFDの中身は先物取引です。
先物取引は証拠金のみで取引可能な差金決済取引で、CFDも同様です。
したがってその仕組み上(証拠金分を除いて)自動で為替ヘッジされます。
そしてCFDの場合は証拠金が円のままで良いため、その証拠金分も全て為替ヘッジされることになります。

上の段落の具体例では、15,000-10,000=5,000ドルの利益が差金決済により得られ、それを(1ドル100円で)円転すると500,000円の利益となります。
為替ヘッジしたのと全く同じ利益になっていますね。

コストはCFDの取引手数料と(ドルの場合はドルの)短期金利です。
ただし、記事上部で書いたとおりGMOクリック証券CFDのS&P500は手数料が0.02%ほどと無視できるレベル、ドルの短期金利は2015年現在0.3~0.35%ほど(他の時期の値は記事上部のリンク参照)ですのでかなりの割安です。
このコストは短期金利が上昇していくほど大きくなっていきますが、円がゼロ金利のままであれば為替ヘッジコストも上昇するので、個人的な予想ではしばらくCFDの手法が割安だと考えています。
円の金利も上昇し始めたら再検討の必要(投資信託・ETF+為替ヘッジとのコスト比較のやり直し)は出てくるかもしれません。

CFDの隠れたコスト削減手法

CFDは証拠金取引のため、商品によりますが10倍程度のレバレッジをかけることができます。
言い換えると拘束される資金が投資信託などの実物資産と比べて大幅に減ります。
価格変動により拘束される資金も変動するため浮く資金は一定額ではありませんが、少なくとも半分は自由に使って問題ないレベルです。
その浮いた半分の資金を定期預金や個人向け国債に投入することでコスト削減が可能です。
年利0.2%の場合は、0.2×(1/2)=0.1%ほどコスト削減できることになります。
換金性の良いものであればもっとCFDから資金を引き出して少ない証拠金で攻めることもできます。(CFDの商品価格下落時など必要に応じて換金してCFDの口座に戻します。)
このように、CFDのコストははっきりとこれだと言えない代わりにいろいろな工夫の余地のある面白い商品です。

2015年11月1日日曜日

長期投資を株価指数CFDでやる理由

自分はインデックス投資家として、日経平均株価やS&P500、DAXなど株価指数への長期投資(バイアンドホールド)に先物の派生商品であるCFDを積極的に利用しています。
その理由は主に以下の3つ。

  • 最近の低コストインデックスファンド・ETF並にコストが安い(+CFDは配当分非課税)
  • 夜間を含め取引時間が長く流動性も十分でリアルタイムに取引が可能
  • 投資資金と建玉数を調整することでレバレッジを細かく設定可能(レバレッジ1.2倍など)

3つの理由の説明

コストは金利によって決まり、2015年現在、取引所CFD(くりっく株365)で年利0.075%ほど、GMOクリック証券CFDで年利0.5~0.6%ほどです。
(ただし、金利は1999年2月以来15年以上今のような低い状態が続いていますが、今後長期で見た場合にはゼロ金利政策を脱出して上昇する可能性もあるので、この低コストが今後何十年と続く保証はありません。)
くりっく株365のコストは破格であり、GMOクリック証券CFDも最近の低コスト投資信託と比較すると見劣りするものの高くはありません。
また、CFDは現物と違って必要な資金が少ないですので、余った資金を国内債券やSBJ銀行の1週間定期預金(年利0.2%)などの無リスク資産で運用することによってコストのさらなる削減を狙えます。

取引時間メリットについては、特に売買タイミングを重視するインデックス投資家にとっては重要でしょう。

レバレッジについては、レバレッジをかけて取引したい人にとってCFD(もしくは先物)がベストな解です。ETFのレバレッジ商品や信用取引はコストが高く、はっきりいってCFDの敵ではありません。

補足事項

先物・CFDと聞くと配当を貰えない印象を受けるかもしれませんが、その仕組み上、買い方が売り方から配当金相当額を受け取ることになりますで心配は不要です。
また、先物はロールオーバーが必要なため確定益が課税対象となりますが、CFDは業者の側でロールオーバーするため買いっぱなし放置で課税も発生しません。(価格調整額という名称で含み益に勝手に入ります。)

なお、この記事で指すCFDは、取引所CFD(くりっく株365)またはGMOクリック証券のCFDとします。
GMOクリック証券のCFDを挙げているのは特に売買手数料が低コスト(0.01~0.04%程度)なためです。
また、取引所CFDはマーケットメイク方式により理論価格の短期金利が無担保コール翌日物金利(2015年現在年利0.075%前後)となっており非常に保有コストが小さいです。
GMOクリック証券の短期金利は2015年現在0.5~0.6%ほどです。
短期金利は投資信託の信託報酬とほぼ同じ性質を持つコストで、投資信託をよく知っている人は上記の数字が安価だと分かるでしょう。(GMOクリック証券の方は最近の低コスト投資信託と比較すると多少割高に感じるかもしれませんが)

最後に注意点として、CFDも先物取引もNISA口座では使えません。NISA口座は(SBI証券などでは)海外ETFの売買手数料無料特典がついてたりするのでVTI・VXUSやVTなどの海外ETFが低コストなためおすすめです。

以下、上述の3つの理由が成立する根拠について説明していきます。
※裁定取引(アービトラージ)というワードが頻出しますが、その内容については前回記事「株価指数先物・CFDの理論価格は?」を参照してください。

株価指数先物・CFDでかかるコストは?

売買手数料と短期金利です。
売買手数料は、GMOクリック証券CFDの場合0.01~0.04%です。(10万円あたり10~40円のイメージ)
短期金利は2015年現在、取引所CFDの場合は無担保コール翌日物金利で0.075%ほど、GMOクリック証券の場合は0.5~0.6%程度です。
なぜ短期金利なのかについては、「株価指数先物・CFDの理論価格は?」を参照してください。
GMOクリック証券の金利の算出はこちらの記事を参照: 「GMOクリック証券CFDのコスト - 日経平均とDAX」「GMOクリック証券CFDのコスト - S&P500

補足: 先物の金利と信用取引の金利の違い

先物の金利は裁定取引(アービトラージ)が発生する際の株価にかかるの対して、株・ETF信用取引の金利は購入時の株価にかかるため、正確には性質が異なります。
信用取引の場合は極端な話、購入後に株価が10倍になっても金利の負担額は変わりません。
一方先物の金利は裁定取引発生時の株価にかかりますので株価が10倍になったら金利の負担額も10倍になります。
インデックスファンドもその日の価額毎に信託報酬が年利計算でかかるため、先物の金利と同じ性質を持っています。
そのためいかなる場合でも信用取引のコストが先物・CFDやインデックスファンドに対して不利だというわけではありません。

株価指数先物・CFDの購入単位は?

レバレッジをかけない場合(レバレッジ1倍の場合)は、CFDの購入単位は(対象とする株価指数・為替レートによりますが)だいたい20万円程度です。
投資信託やETFと比べると大きめですが十分細かく買えるレベルと言えるでしょう。
先物については、日経平均2万円の時に日経225ミニが200万円、日経225先物が2000万円と購入単位は大きいです。
ただし、先物もCFDもレバレッジをかけることが可能なので、レバレッジをかける場合はもっと小さな単位で購入可能です。
そのためたまたま口座に資金が少なくても突然の下落等で購入のチャンスがあった場合は、(レバレッジ限度の範囲で)購入してから後日入金してレバレッジを1に戻すということも可能です。

株価指数先物・CFDでは配当を貰える?

株価指数の先物・CFDで買い(ロング)をしている側は売り(ショート)をしている側から配当を貰えます。
そうでなければ先物取引の仕組み上、裁定取引(アービトラージ)が可能となるためです。
詳細な理由は「株価指数先物・CFDの理論価格は?」を参照してください。

先物の仕組みを知らない場合に感じるかもしれない疑問

ここでは先物の仕組みを知らないと生じがちな疑問に対する見解を列挙します。

先物取引・CFDはレバレッジがあるので危険なのでは?

レバレッジをかけるのは権利であって義務ではありません。
レバレッジをかけることが危険だと感じるならレバレッジを1倍にすれば全く問題無いですし追証も発生しません。
ちなみにそれはFXも同様です。

先物取引・CFDはゼロサムゲームだから儲からないのでは?

先物取引はゼロサムゲームですが、裁定取引があるため儲かるかどうかと関連性はありません。
そもそも裁定取引によって現物と価格が連動しているので儲かるかどうかは現物と変わりません。
実際のところ、現物がプラスサムであれば、裁定取引業者の損益を無視した場合に先物取引参加者の損益はプラスサムとなります。
裁定取引業者は先物で損をしても現物で得をするという取引を行っていますし、その逆も行うのでトータルの損益は現物と合わせて考える必要があるのです。
たとえば、株価が上昇し続けている時に(裁定取引をしない)先物取引参加者が全員買いをした場合を考えてみましょう。
この時先物価格が現物よりも高くなるので、裁定取引業者は現物買い・先物売りの裁定取引を行います。
すると裁定取引業者は先物取引では損をします(これによって先物取引自体はゼロサムとなります)が、現物でそれ以上の利益を出しているのでトータルでプラスです。 その他の先物取引参加者も買いなのでもちろんプラスです。
じゃあトータルで損をしたのは誰かというと、そもそも現物は(株価が上昇を続ける限り)プラスサムなので誰もいないかもしれないですし、現物を空売りした人が損をしたかもしれません。
もちろんこの例は極端な話であって、現実にはいろんなプレイヤーが現物・先物の境界無しに入り乱れています。

先物取引・CFDはヘッジ目的でするものであって投資じゃないのでは?

先物取引・CFDはヘッジがしやすいからヘッジ目的で行う人・機関が存在するだけであり、先物取引・CFDがヘッジのために存在するわけではありません。
ヘッジがしやすいというのは、現物株の取引時間外で売ることができるというのと、日経平均225銘柄を同時に売るのが難しいのでひとまず先物を売った方が簡単だという意味です。
また、この記事では扱っていませんが商品の先物については商品の現物を売買する業者がヘッジ目的に利用しており、そもそも先物の発祥がそこにあるので、ヘッジという印象が強いのかもしれません。
株価指数の先物・CFDが長期投資に使える理由については本記事上部で書かれている通りです。

自分の投資方針

NISA口座では(先物もCFDもできないので)売買手数料無料キャンペーン恒久化を利用して海外ETF(VTI + VXUS)で長期投資、他の口座はCFDで長期投資+短期トレードをしています。
(FXや商品先物CFDもやっていますが今回の記事では触れません)
CFDはGMOクリック証券を利用し、タイミング売買を絡めてレバレッジを1~1.5倍を目安に変化させています。(タイトにストップロス設定をしている短期ポジションについてはもっとレバレッジをかけることもあります。)
しかしCFDで扱われている株価指数は中小型株が無かったり、国もアメリカ(ダウ・S&P500・NASDAQ)・日本・ドイツ・フランス・イギリス・インド・中国など限られています。
そのためCFDに無いものについてはインデックスファンド(たとえばEXE-i グローバル中小型株式ファンドなど)を利用しています。
また、CFDを1~1.5倍という低レバレッジで運用している場合は現金余力が生じます。CFDでは最大20倍程度レバレッジをかけられるので、その分だけ必要証拠金が少なくなるためです。
その余力を(上でも書いた手法ですが)国内債券やSBJ銀行の1週間定期預金(年利0.2%)などの無リスク資産、それから金の運用などに回し、利回りの向上を図っています。(株価下落時に対応できるようリスクが小さくすぐ換金できる商品を選んでいます。)
レバレッジ商品はこのような資金効率の高さも大きなメリットです。

株価指数先物・CFDの理論価格は?

先物の理論価格は以下の通りです。(CFDは中身が先物なので理論価格も同じです。)

現物価格×{1+(短期金利-配当利回り)×(決済までの期日/365日)}

参考: http://www.jsda.or.jp/manabu/qa/derivative06.html

先物価格決定のメカニズムは裁定取引(アービトラージ)

裁定取引が発生する理由

先物には清算日に特別清算指数(SQ)と呼ばれる現物価格で清算するというルールがあります。
つまり最終的には現物と価格が一致します。
ということは、あるタイミングで現物価格が19000円、先物価格が19500円だった場合に現物を買って先物を売ると(金利を考えなければ)差の500円分儲かります。
なぜなら、その後現物がどのように値動きしたとしても差額の500円は清算日に0となるからです。
たとえばその後に現物がSQ算出のタイミングで18000円になったとしても先物もその時18000円で清算されますので、現物で1000円の損失、先物で1500円分の利益となって合計500円の利益となります。
これが裁定取引(アービトラージ)です。

裁定取引による価格形成

裁定取引(アービトラージ)で重要なのは、正確に実行できればノーリスクで利益を得られる点です。
つまりチャンスがあるなら皆がやろうとします。
そして実際に皆が裁定取引(アービトラージ)をやり始めると、現物と先物の価格の乖離(正確に言うと先物の理論価格と先物価格の乖離)はどんどん無くなっていきます。
これが先物価格決定のメカニズムです。
先物取引には現物と価格が常に連動するという「ルール」はありませんが、裁定取引によって現物との価格差が勝手に埋められるのです。
もちろん裁定取引が行われない環境では現物と先物との価格の乖離が大きくなる可能性がありますが、その場合は自分が裁定取引をして利益を出せば良いのです。
しかし成熟した市場では大手金融機関が裁定取引を常に実行していますので、一般投資家がその可能性を考える必要は無いでしょう。

金利の考慮

現物と先物の価格の乖離を利用して利益を上げる裁定取引ですが、そのための資金は他の業者に融資して金利を得るという選択肢もあるはずです。
従って少なくともその金利分は余計に儲からないと裁定取引は行われません。
これを考慮した式が、現物価格×{1+短期金利×(決済までの期日/365日)}です。
短期金利は、TIBORが示す年利0.17%~0.20%が目安です。

短期金利なのはなぜ?

裁定取引(アービトラージ)を行っている業者が必要とする資金の金利が最大3ヶ月程度の短期金利で済むからです。
3ヶ月程度なのは、先物の清算日の間隔が最大3ヶ月程度(日経平均の場合は3月、6月、9月、12月)で、清算日毎にお金が戻ってくるためです。
2015年は3ヶ月ものが年利0.17%程度となっています。2014年は年利0.2%程度でした。このような低金利は1999年2月からのゼロ金利政策によるものです。
現在のレート: http://www.jbatibor.or.jp/rate/
過去のレート: http://www.jbatibor.or.jp/rate/past_record.html

裁定取引をしている機関はどこ?

株価指数の裁定取引は現物と先物の両方を瞬時に売買する必要があり、信用力も取引環境も貧弱な個人ができるようなものではありません。
裁定取引業者は国内だと野村や大和、海外だとゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった大手金融機関に限られ、そのような信用ある機関同士の資金の貸借はTIBORやLIBORといった(個人向けの金利と比べると非常に低い)レートで行われます。
もっとも先物・CFDのコストとして実際に支払う金利相当額は裁定取引の結果生じた先物と現物の価格差ですので、必ずしもTIBORと一致するわけではありません。裁定取引業者の取引環境に依存します。

なお、くりっく株365のCFDは独自のマーケットメイク方式のため短期金利は無担保コール翌日物金利となっています。(参考: http://www.click365.jp/cfd/about/03.shtml)

配当の考慮

日経平均株価は配当の権利確定日を通過するとその分価格が下落します。(配当落ち)
なぜなら、そうでないと配当の権利確定日だけ日経平均構成銘柄を買って翌日に売れば配当をただ取りできてしまうためです。
実際にはただ取りしようとする人の翌日の売却によって日経平均株価は配当分だけ下落します。
現物を持っている人は配当を取得しているのでその下落分が埋め合わせされます。(空売りしている人は配当分支払います。)

先物も限月間(たとえば3月限と6月限の間)で配当分の下落が生じます。
なぜなら、そうでないと日経平均銘柄を買った上で(配当落ちが反映されていない)次の限月の先物を売る(ショートする)ことで配当をただ取りするという裁定取引が可能となるためです。
従って、裁定取引業者によって自然と限月間に配当の下落が反映されます。
これで先物の理論価格の式が完成します。
現物価格×{1+(短期金利-配当利回り)×(決済までの期日/365日)}
※ここでは分かりやすく日経平均株価と表現しましたが、S&P500や他の株式指数についても同様です。

以上の理由で、先物を買っている人はロールオーバー時に配当を得ることとなります。
ロールオーバー時に手持ちの先物を売却し、次の限月の先物を配当分だけ安い価格で購入できるのでその差額が配当利益です。
CFDの場合は「価格調整額」という名称で限月切り替わり時に含み益に入ります。(そのため先物と違って配当に課税されません。)
逆にショートしている人はロールオーバー時に配当を支払います。
先物は買い(ロング)と売り(ショート)が同数います(ゼロサムゲームです)ので、ロングとショートが配当の授受をしているわけです。