2015年11月1日日曜日

株価指数先物・CFDの理論価格は?

先物の理論価格は以下の通りです。(CFDは中身が先物なので理論価格も同じです。)

現物価格×{1+(短期金利-配当利回り)×(決済までの期日/365日)}

参考: http://www.jsda.or.jp/manabu/qa/derivative06.html

先物価格決定のメカニズムは裁定取引(アービトラージ)

裁定取引が発生する理由

先物には清算日に特別清算指数(SQ)と呼ばれる現物価格で清算するというルールがあります。
つまり最終的には現物と価格が一致します。
ということは、あるタイミングで現物価格が19000円、先物価格が19500円だった場合に現物を買って先物を売ると(金利を考えなければ)差の500円分儲かります。
なぜなら、その後現物がどのように値動きしたとしても差額の500円は清算日に0となるからです。
たとえばその後に現物がSQ算出のタイミングで18000円になったとしても先物もその時18000円で清算されますので、現物で1000円の損失、先物で1500円分の利益となって合計500円の利益となります。
これが裁定取引(アービトラージ)です。

裁定取引による価格形成

裁定取引(アービトラージ)で重要なのは、正確に実行できればノーリスクで利益を得られる点です。
つまりチャンスがあるなら皆がやろうとします。
そして実際に皆が裁定取引(アービトラージ)をやり始めると、現物と先物の価格の乖離(正確に言うと先物の理論価格と先物価格の乖離)はどんどん無くなっていきます。
これが先物価格決定のメカニズムです。
先物取引には現物と価格が常に連動するという「ルール」はありませんが、裁定取引によって現物との価格差が勝手に埋められるのです。
もちろん裁定取引が行われない環境では現物と先物との価格の乖離が大きくなる可能性がありますが、その場合は自分が裁定取引をして利益を出せば良いのです。
しかし成熟した市場では大手金融機関が裁定取引を常に実行していますので、一般投資家がその可能性を考える必要は無いでしょう。

金利の考慮

現物と先物の価格の乖離を利用して利益を上げる裁定取引ですが、そのための資金は他の業者に融資して金利を得るという選択肢もあるはずです。
従って少なくともその金利分は余計に儲からないと裁定取引は行われません。
これを考慮した式が、現物価格×{1+短期金利×(決済までの期日/365日)}です。
短期金利は、TIBORが示す年利0.17%~0.20%が目安です。

短期金利なのはなぜ?

裁定取引(アービトラージ)を行っている業者が必要とする資金の金利が最大3ヶ月程度の短期金利で済むからです。
3ヶ月程度なのは、先物の清算日の間隔が最大3ヶ月程度(日経平均の場合は3月、6月、9月、12月)で、清算日毎にお金が戻ってくるためです。
2015年は3ヶ月ものが年利0.17%程度となっています。2014年は年利0.2%程度でした。このような低金利は1999年2月からのゼロ金利政策によるものです。
現在のレート: http://www.jbatibor.or.jp/rate/
過去のレート: http://www.jbatibor.or.jp/rate/past_record.html

裁定取引をしている機関はどこ?

株価指数の裁定取引は現物と先物の両方を瞬時に売買する必要があり、信用力も取引環境も貧弱な個人ができるようなものではありません。
裁定取引業者は国内だと野村や大和、海外だとゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった大手金融機関に限られ、そのような信用ある機関同士の資金の貸借はTIBORやLIBORといった(個人向けの金利と比べると非常に低い)レートで行われます。
もっとも先物・CFDのコストとして実際に支払う金利相当額は裁定取引の結果生じた先物と現物の価格差ですので、必ずしもTIBORと一致するわけではありません。裁定取引業者の取引環境に依存します。

なお、くりっく株365のCFDは独自のマーケットメイク方式のため短期金利は無担保コール翌日物金利となっています。(参考: http://www.click365.jp/cfd/about/03.shtml)

配当の考慮

日経平均株価は配当の権利確定日を通過するとその分価格が下落します。(配当落ち)
なぜなら、そうでないと配当の権利確定日だけ日経平均構成銘柄を買って翌日に売れば配当をただ取りできてしまうためです。
実際にはただ取りしようとする人の翌日の売却によって日経平均株価は配当分だけ下落します。
現物を持っている人は配当を取得しているのでその下落分が埋め合わせされます。(空売りしている人は配当分支払います。)

先物も限月間(たとえば3月限と6月限の間)で配当分の下落が生じます。
なぜなら、そうでないと日経平均銘柄を買った上で(配当落ちが反映されていない)次の限月の先物を売る(ショートする)ことで配当をただ取りするという裁定取引が可能となるためです。
従って、裁定取引業者によって自然と限月間に配当の下落が反映されます。
これで先物の理論価格の式が完成します。
現物価格×{1+(短期金利-配当利回り)×(決済までの期日/365日)}
※ここでは分かりやすく日経平均株価と表現しましたが、S&P500や他の株式指数についても同様です。

以上の理由で、先物を買っている人はロールオーバー時に配当を得ることとなります。
ロールオーバー時に手持ちの先物を売却し、次の限月の先物を配当分だけ安い価格で購入できるのでその差額が配当利益です。
CFDの場合は「価格調整額」という名称で限月切り替わり時に含み益に入ります。(そのため先物と違って配当に課税されません。)
逆にショートしている人はロールオーバー時に配当を支払います。
先物は買い(ロング)と売り(ショート)が同数います(ゼロサムゲームです)ので、ロングとショートが配当の授受をしているわけです。

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