この記事は前回の記事「FX短期トレードの優位性」からの続きです。
グローバル・マクロ戦略の優位性
グローバル・マクロ戦略は、世界のマクロ経済や金融市場動向からマーケットの動きを予測し、為替・株式・債券・コモディティなどあらゆる金融商品を売買する手法です。
この戦略の優位性は、得た情報や分析からある特定の金融商品の将来的な値動きの方向やレンジが予測できたり、一時的な買われ過ぎ・売られ過ぎの状態であることを判断できることです。
そして市場が予測した方向に向かった時、予測した価格に追いついた時、予測したレンジ内のまま時間経過しオプションの売りを決済できた時などに利益を得ることができます。
いわゆる完全に「効率的な市場」であればこのような隙はありませんので、グローバル・マクロ戦略は効率的市場仮説とは反対の立場を取ることになります。
個人の見解では、たとえば日銀やGPIFなど市場価値を考えずに買い切る異色の(そして巨額の)プレイヤーとそれに乗っかる短期筋、そしてこれが鍵なのですが、それが椅子取りゲームだと分かっていない「愚かなプレイヤー」が常に存在するため彼らから利益を吸い上げることが可能である、つまり非効率な市場が存在していると考えています。
この「愚かなプレイヤー」の仮定はFX短期トレード戦略でもよく見られ、今のところ再現性があるようです。
もちろん自分が愚かなプレイヤーになっていたら身も蓋もありませんが、それは実力を上げれば愚かなプレイヤーになる確率を減らせる、ということも意味します。
グローバル・マクロ戦略の具体例
以下、効率的市場仮説は誤りであるという立場の下で具体例を記述します。
また、グローバル・マクロ戦略の具体的な予測やトレード内容は人によって異なるため、具体例はあくまで戦略の一例です。
たとえば何も知らない人の場合、2015年にドル円が125円であってもその先1年~数年のスパンで(対ドルで)円安と円高のどちらに向かう可能性の方が高いのか全く判断できないでしょう。
しかしこの戦略では以下の様な項目を判断材料とし、近い内に円高ドル安トレンドに反転するのではないかという予測を立てられます。
- 利上げを進めるには目立つアメリカの経済指標の鈍化(特に製造業)とインフレの伸び悩み
- 人民元切り下げが象徴する新興国のドル高に対する脆弱性及びそれを理由の1つにドル高を懸念するイエレンFRB議長の発言
- 2015年の1ドル120円~125円というレートは実質実効為替レートや購買力平価、経常収支などの観点からファンダメンタルズと乖離した異例の円安状態である
- GPIFの資産比率変更によるドル買い・株買いによる円安圧力は資産比率変更が完了すれば消える
以上の根拠が示すのは当然ながら確証では無く予測です。(確証であるなら皆がドル円ショートに転じるためこの予測で儲かることはできなくなります。)
この予測が現実化した場合、ドル円をロングにし続けてきたプレイヤーの損切り連鎖によるトレンドの強化を期待できます。
積極的にドル円ショートするほど予測に自信が無い場合も、この予測が成り立つ時点でドル円を積極的にロングするモチベーションは抱かずに済みます。
たとえばドル円と正の相関関係にある資産を持っている場合、ドル円ショートによるヘッジをした方がリスクを下げられるという判断が可能です。
結果としては125円から(2016年7月時点で)99円まで円高が進み、この予測を早期に活用できた人は大きな利益を得ました。
個人の見解では、2015年8月のチャイナショックでリスクオフや利上げ期待後退による円買い意欲は俄然強いことが確認できたので、2015年末から2016年初にかけて119円あたりでのドル円ショートは利上げ期待後退予測に自信があるならかなり確度が高かったという印象です。
ところでドル高に限界があることはコモディティの下落もまた限界があるということになります。
これにもう1つ、世界的な量的緩和が引き起こすバブルの崩壊が遠くない内に起こると仮定した場合、金 (gold) の暴騰シナリオに行き着きます。
それについては「グローバルマクロ・リサーチ・インスティテュート」が詳しいですのでこの記事では割愛します。
途中経過としては2016年7月末時点で金鉱株で年初来100%を超えるリターン、現物でもドル価格で年初来30%以上のリターンが得られています。
シナリオ通りになった場合の結末がどうなるかは量的緩和バブル崩壊が来た時に分かるでしょう。
また、「グローバルマクロ・リサーチ・インスティテュート」は金に限らずグローバル・マクロ戦略そのものを取り上げており、ブログが公開されて以降は予測の大筋が的中しているので予測の根拠を含めて非常に参考になります。
この戦略のメリット
あらゆる金融商品とトレード手段から常に収益となるテーマと手法を追求しているため、正しく予測する力があればどのような経済状況でも安定した収益を上げられます。
また、状況によって株ロングと金ロング、金ロングと原油ショートなどテーマによって逆相関でありながらプラスリターンが見込める対象・タイミングで投資するなどして一時的な含み損を極力小さくする工夫も可能です。
この戦略のデメリット
得られた情報と分析を元にした予測に収益が依存するため、自らの情報収集能力と分析力に自信が無いと利益に結びつけることが難しいです。
同じグローバル・マクロ戦略を取っている実力者でも予測が異なるというケースが多々あるため、予測が外れた場合を想定したリスクヘッジが要求されます。
投資対象が多岐にわたることからもあらゆる金融商品や経済学の勉強が必要になり、日々のニュースの閲覧と定期的な経済指標の分析もしくは分析記事の読み込みが必要です。
以下の記事に続きます。
「自分が試行錯誤しながら実行している投資戦略」
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