NISA制度の内容
NISA制度の内容はマネックス証券の以下のページが分かりやすいです。
https://info.monex.co.jp/nisa/about.html
NISAのメリットは投資で得られた利益に対して非課税であることと(多くの証券会社で)買付手数料が無料なこと、デメリットは確定申告で損益通算と損失の繰越控除ができないことです。
(NISAでは投資対象商品が現物株・投資信託・REIT・ETF・ETNに限定される点も人によってはデメリットとなりますが細かい話ですので本記事では無視します。)
損益通算は複数の証券口座においてある年(1月~12月)の損益を合算できる制度です。
たとえばある口座で利益が出てても他の口座で損失が出ている場合はそれを合算した利益にのみ課税されます。
損失の繰越控除はある年(1月~12月までの取引)で合計が損失となった場合に翌年からの3年間の利益と相殺できる制度です。
NISAの損得を決定する要素
主に以下の要素がNISAの損得を決定します。
既に大きな金額でいろいろ投資をやっている、という人はNISAが損か得かの話が複雑になりますので、要素を押さえて自分で考える必要があります。
- 売却益が非課税であること(非NISA口座でかかる20.315%の税金が免除)
- NISAの新規投資枠(ロールオーバー含む)の期限が2023年であること
- 5年に1度利益確定されること(ロールオーバーする場合は購入価額が更新されること)
- 他口座と損益通算ができないこと
- 損失の繰越控除ができないこと
- 多くの証券会社でNISA口座では購入手数料が無料であること(特に海外ETFは恩恵大)
NISAの方が得しやすい人・そうでない人
NISAの損得を決定する要素は複雑なので汎用的な結論が出ません。
ですのでこの記事では一般解を示すのではなく、以下のように具体的なケースをいくつか想定して損得を示します。
また、最近のニュースによると非課税期間を20年に長期化するNISA制度の変更が検討されているようですが、もし実現するとしても数年後になるとのことなのでこの記事では触れないこととします。
長期積立投資をする人
長期積立投資をする人は、基本的に利益確定を行いません。(NISA口座ではロールオーバーを続けます。)
したがって損益通算と損失の繰越控除について考える必要がありません。
また、(仮にですが)NISAの2023年期限が廃止された場合は無条件でNISAの方が得になります。
逆に言うと、2023年期限がある限りは損になるケースが存在します。
それは、NISA口座から非NISA口座移管時に購入価額が更新されるため将来の利益確定時にかかる税金が増える可能性があるからです。
NISA口座の資産は2024年からロールオーバーできなくなり、600万円の枠が0になる2028年まで毎年非NISA口座(特定口座または一般口座)に移管することとなります。
この時に購入価額が更新されます。
もし購入価額が下がっていたら(損失が出ている場合は)、将来の利益確定時にかかる税金が増えます。
この購入価額の減少が、今までの5年毎のロールオーバー時の利益合計を上回っている場合はNISA口座で運用していた方が損になるということです。
もっとシンプルに言うと、NISAを始めてから2028年までの損益合計がマイナスの場合はNISA口座の方が損です。
しかしそのようなケースはまれでしょう。
たとえば今からやるにしても利益確定が始まる2024年まで8年の猶予があるのであり、そこから2028年まで5年間の8~13年トータルリターンがマイナスでなければ損になりません。
ITバブル崩壊は約2年で、リーマン・ショックは約1年で底打ち・反転上昇していることを考えると、通常の金融危機であればNISAの方が損失になる可能性は小さいと言えます。
ただ心配があるとしたら、今の世界的な量的緩和が世界恐慌並のバブル崩壊を導き、10年以上の長期に渡って株価低迷を続ける可能性が(著名投資家を含み)ネット上で指摘されているということです。
その悲劇が起こった場合はNISAを使った方が損になってしまうことになります。
結論としては、長期積立投資を行う人は2023年~2028年までにトータルの損益がプラスになる可能性が高いと信じられる場合、NISAをやるべきです。
毎年利益確定を行っていて、確定申告をしている人
デイトレードやスイングトレード、1年や数年単位の中期トレードをやってる人は毎年利益確定を行って確定申告していると思います。
その場合はNISAでは損益通算できないことや損失の繰越控除ができないことがデメリットとして浮上してきます。
投資金額がNISAの枠内に収まる人
正確に言うと、NISA対象商品に対して年に120万円以下しか追加投資せず、その保有資産の購入価額合計が600万円以下で、なおかつ信用取引をしない人、です。
FXや先物、CFDにいくら投資していてもここでは関係ありません。
なぜならFXも先物もCFDも上記商品とは元々損益通算できないのでNISAのデメリットと無関係だからです。
しかし信用取引はNISAではできないのに(非NISA口座であれば)NISA対象商品と損益通算が可能なので、このパターンからは除外します。
(さらに正確には信用取引以外にもあると思いますがマイナーなのでここでは無視します。)
このパターンに当てはまる人は、NISA対象商品と損益通算可能な投資を全てNISA口座で完結できます。
したがって損益通算について考慮する必要はありません。
考える必要があるのは繰越控除です。
新規にNISAで投資可能な期限は2023年です。
したがって、2024年以降は課税対象となる非NISA口座(特定口座または一般口座)で投資を行う必要があります。
たとえば極端ですが以下の例を考えましょう。
NISA口座
2020年: -5万、2021年: -5万、2022年: -5万、2023年: -5万
非NISA口座
2024年: +50万
運悪く2020年~2023年まで合計20万円の損失ですが、NISA口座なのでこれは損失繰越控除の対象になりません。
2024年はNISAの投資枠外なので+50万円に対して20.315%の税金がかかり、39万8425円が実利益となります。
2020年からの損益合計は19万8425円となります。
しかしこれはNISAでやっていた方が損です。
なぜなら2021年から非NISA口座でやっていた場合は2024年の利益の繰越控除が可能だからです。
2024年は50 - 15 = 35万円が課税対象となり、27万8897円の実利益。
2020年からの損益合計は22万8897円となります。
結果的に3万円近くNISAを使わない方が得になりました。
しかしこれはもちろん、NISAの合計損益がマイナスになったから発生した損です。
今から2023年までNISAをやってトータルマイナス、というのは長期積立の場合と同じでかなり悲劇的な状況です。
よほど世界的に経済状況が悪くなったか、よほど下手くそだということです。
心配な人は、NISA終了の2023年が近づく2020年辺りでトータルがプラスの人は勝ち逃げして良いと思います。
負けるリスクを受容できる人は、勝つ確率が50%を超えると見込むなら心配をせずやり切っても良いでしょう。
投資金額がNISAの枠内に収まらない人
前のパターンと同様、FXや先物、CFDはNISA対象商品とは元々損益通算できないため、投資金額からは除外します。(いくら投資しててもNISAの損得と関係ありません)
したがって正確には、NISA対象商品に対してNISAの枠を超える金額の投資を行っているか、信用取引をしている人です。
この場合はNISAで損失が出ても非NISA枠の損失と損益通算ができないため、NISAでの勝率が悪い場合、NISAを使った方が損失が(税負担が)大きくなる可能性が常にあります。
端的に言うと下手くそな人は損をしやすく、上手い人は得をしやすくなります。
また基本的な戦略は自信のある投資をNISAで行い、それ以外は非NISA口座でやる、というものでしょう。
しかしこれに当てはまる人はNISAの損得を左右する要素があまりに多いため、「NISAの損得を決定する要素」を元に各自が戦略を立てる必要があります。
まとめ
長期積立投資をする人、投資対象と投資金額が少ない人はNISAのデメリットを受ける可能性が小さく、得をしやすいです。
毎年利益確定をしている人、信用取引をしている人、投資金額の大きな人はNISAのデメリットを意識しないと損をする可能性が出てきます。