2015年10月26日月曜日

株価が動くのはなぜ?根本の理由

株価は人気な銘柄が上がると言われますが、そもそもなぜ株は買われるのでしょうか?
その企業の業績が良いから、将来性があるからなどという理由は株式を理解している人にしか分かりません。
なぜ、業績が良かったり将来性があると株が買われるのでしょうか?
これが分からないと株(やその集合体である株価指数連動の投資信託・ETF・先物・CFD)を売買する判断を自分でできなくなってしまいます。
この記事ではその疑問に対する自分の見解をまとめます。

企業が株を発行する理由は?

そもそも企業が株を発行する理由は何でしょうか?
それは主として返済義務の無い資金を得るためです。
銀行から借り入れる資金は利子を含めて返済する必要がありますが、株は株主による出資のため返済の必要がありません。
そのため、企業は多額の株を発行できるほど事業投資(設備投資や買収など)を積極的に行えます。
株価が上がるほどより高い価格で新規に株を発行することができるため、企業は株価が上がった方が資金の確保が容易になり、積極的な経営ができます。
ただし、株価の上昇で直接利益を得るのは株主(上昇したタイミングで売却した場合)であって企業ではありません。
企業は株価を上げる(株の人気を高める)ため、株主に配当金を出したり株式分割や自社株買いを行います。
ブランド力を高めたり、買収を防ぐためにも株価が上がることは企業にとって好ましいことです。

投資家が株を購入する理由は?

主な理由は配当金、企業価値と株価の連動、純資産と株価の連動の3つです。
ここではさらにそれらが生じる理由として、株主が持つ以下の3つの権利を挙げます。

1. 投資家は株主になることで配当金を受け取ることができます。
2. 持ち株数に応じて株主総会での各種権限や配当分配請求権・解散請求件・経営権などを持てます。
3. 企業が解散した場合は解散価値として企業の資本金を受け取ることができます。

配当金

1の配当金は投資家にとっては金利収入のようなもので、株価に対する配当金の割合(配当利回り)が高いほど魅力的な投資先ということになります。(TOPIX銘柄の平均だと今は2%前後です。)
配当金は通常企業の業績が良いほど高くなりますので、安定して収益を上げられる企業ほど高い配当金を期待できます。(業績が良くても無配当を方針とする企業もありますがそれについては後述。)
逆に業績が悪い場合は配当金が減ったり0になることがあります。(リーマン・ショックの時はそのような企業が少なくなかったようです。)

企業価値と株価の連動

2について、それらの権限を直接欲しいと思う個人投資家はほとんどいないと思いますが、過半数の株式を取得して経営権を得る(買収する)という手段が存在するため、株価はその会社自体の価値を表すと言えます。
従って1には矛盾しますが、無配当の企業であっても買収する側の視点で価値が高まり続けているのであれば、必然的に株価は上昇することになります。
その場合に想定される株価上昇の過程は、買収が繰り返されたり、買収を防ぐために企業が自社株買いするなどによるものです。
もちろんこれが実際に起こる必要はなく、株価が低いままではそのシナリオが起こり得るという理由で株価上昇を見込んでいろんな投資家が株を購入します。
株価が上昇すれば株主は株の売却によって利益を得ることができます。

純資産と株価の連動

最後に3について、こちらも2と同じように買収した者が利益を上げられるシナリオが存在するため時価総額が会社の純資産以上に値下がることを防ぎます。
そのシナリオは、時価総額(=株価×発行済み株式数)が会社の解散価値(純資産)を下回った時に買収して解散を行い、分配された純資産と株価との差額で儲けるというものです。
※ただし、実際に株主の懐に入る額は(隠れた負債や含み損、それから買収にかかる費用などにより)純資産からの計算と一致するとは限らないのであくまで目安です。

まとめと派生して生じる株価変動の要因

以上3つの理由があるからこそ、業績が良かったり将来性があるとその企業の株が買われるのです。(逆の場合は売られます。)
ただし、投資家は企業の「将来の」業績を織り込んで株を売買しますので、現時点で業績が良くても今後も株価が上昇するかどうかは不確定です。
ある時は将来性が過剰に評価されてITバブルのような株価の異常な上昇が起きたり、逆に中国経済の落ち込みで過度に将来性が悲観されて株が投げ売られたりします。
そしてそのような動きがあることで、企業の価値には目を向けずチャートの形状や人間の行動心理を元に株価の動きを予測し売買する者も出現します。
実際に株価が変動する理由はたくさんあります。
しかしたくさんある理由も、その大元は上の3つの理由にあると言って良いでしょう。

株価の予測に指標が使われる理由

上記の内容を理解していると、株価の変動予測になぜPERのような指標が使われるのかが分かります。
ここではよく使われる指標の一部を紹介します。

配当利回り

(株価) / (年間配当金の割合)
先述の通り株式売買の根本理由の1つである配当金の大小を示す指標です。
投資ではそれぞれの会社が発表している年間配当金の予想値を使用するのが普通です。
あくまで現在の予想値なので、予想値の発表後に将来的な業績の悪化を示唆する何らかの要因が発生した場合は配当利回りが高くても将来的に下がると見られ不人気となります。
また、配当金を出さずに会社の価値を高めたり自社株買いによる株価上昇で株主還元する企業もありますので、配当利回りの良さは投資先の判断材料のあくまで一部です。

EPS

1株当たり当期利益
会社の収益を示す指標です。
先述の通り会社の収益は会社の価値の一部であり株価に影響を与える重要な指標の一つです。
もちろん配当金の増減にも影響するでしょう。
当期利益の予想値は各企業が決算発表時に公開しています。
決算発表で当期利益の予想値が市場の予測を上回ると基本的に株価は上昇することになります。

PER

(株価) / (1株当たり当期利益)
EPSと株価の関係を示す指標です。
いくらEPSが高くても既に人気で株価が上がっていたらお買い得とは言えません。
PERが高かったら割高、低かったら割安です。
しかしその境目とされる数値は業界によってかなり異なること、投資家側の需要(他の金融商品の利回りや所得など)で左右されること、(PERはあくまで当期利益の予想値をベースにしてるため)今は低PER銘柄であっても将来的にEPSが下がって高PER銘柄になる可能性もあることなどから、PERから直接株価の変動を予測できるわけではありません。
ただ、PERが高い銘柄は何らかの理由で将来性が見込まれた(業績だけでなく単に人気が人気を呼んで株価が上昇するバブルを含む)人気株だというのは読み取れます。
逆に低PER銘柄は何らかの理由で将来が悲観されている危ない株か、たまたま注目されず十分な買い手が集まっていない大穴株の可能性があります。

PBR

(株価) / (1株あたり純資産)
解散価値を示す指標で、先述の理由3で書いた内容と繋がります。
PBRが1を割っている場合は買収して解散の手法が有効となるので底値である可能性があります。
ただし隠れた債務や不動産の含み損益が含まれないなど実際に解散した場合に得られる価値とはズレがあるかもしれないことには注意が必要です。
また、買収はTOBによる株の買い付けが一般的ですがその場合は株価にプレミアムを上乗せて購入するため、実際に解散目的で買収するにはPBRは1を大きく割ってないと(0.6など)難しいようです。
実際、リーマン・ショックの時はPBRが1を割っている企業が解散されないままたくさん残っていました。
PBRが1を割れても買収されずそのまま債務超過が進んで倒産となれば買った株は紙くずになってしまいます。
従ってPBR1割れは割安で買いと言える一方、吟味しないと大きなリスクを背負うことになるとも言えます。

まとめ

  • 企業にとって株式は返済義務の無い魅力的な資金調達手段です
  • 企業は新株発行で資金を集めやすくすることと他のいくつかの理由により株価の上昇を好み、株主に配当金や自社株買いなどの手段で利益を還元します
  • 株主への利益還元(配当金など)の大小はその企業の業績によって左右されます
  • 買収という手段があるため企業の価値と株価が連動します
  • 買収・解散という手段があるため企業の純資産と株価が連動します
  • 投資家は企業による株主還元や、企業の成長(価値向上)による株価上昇(もしくはその逆)を求めて株を購入(もしくは売却・空売り)します
  • そこから派生してチャートの形状や人間の行動心理を元に株価変動を予測して売買する者も出現します
  • 企業の価値が株価を変動させると言えるので、その指標としてEPSやPERなどが使用されます